出産育児一時金とは、健康保険等の被保険者が出産したとき、出産に要する経済的負担を軽減するため、一定の金額が支給される制度です。
出産育児一時金の支給額は、公的病院における出産費用等を勘案して定められており、これまで原則42万円でしたが、2023年4月1日から1児につき50万円が支給されます。
厚生労働省の2022年10月13日第155回社会保障審議会医療保険部会資料によると、出産費用は年間平均1%前後で増加しています。
2021年度における出産費用の状況を都道府県別にみると、一番高いところで東京都の56万5,092円(平均値)、一番低いところで鳥取県の35万7,443円(平均値)、全国では45万4,994円(平均値)です。
出産費用の増加要因や地域差の要因として、医療費水準や物価水準、私的病院の割合、妊婦の年齢等がありますが、最も大きい要因は地域の所得水準となっています。
出産にかかる費用に出産育児一時金を充てることができるよう、協会けんぽまたは健保組合から出産育児一時金を医療機関等に直接支払う仕組み(直接支払制度)があります。出産費用としてまとまった額を事前に用意する必要がないので、被保険者の負担は軽減されます。
また、直接支払制度では、比較的規模が小さく事務的負担や資金繰りへの影響が大きいと考えられる施設については、医療機関等が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取る「受取代理」制度を利用することができます。
出産育児一時金額を超える部分のみ支払えばよいという点ではどちらも同じですが、直接支払制度が出産育児一時金の請求手続も分娩機関が代行してくれるのに対し、受取代理制度では原則、被保険者側が請求手続きをとる必要があります。
ただし、出産費用が出産育児一時金の範囲内で収まった場合、その差額については直接支払制度では本人が別途請求する必要がありますが、受取代理制度では本人手続きは不要になるという違いがあります。