2025年6月13日、「年金制度改正法」が参議院本会議で可決・成立し、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用範囲が拡大されることが決まりました 。これにより、短時間労働者(パート・アルバイトなど)の社会保険加入対象がさらに広がることになります。
今回は、この改正の具体的な内容について、以下の通りまとめます。
現在、社会保険の加入対象となる短時間労働者は、従業員数51人以上の企業に勤務し、週の所定労働時間が20時間以上であることが条件です。
しかし、2027年(令和9年)10月以降、この企業規模要件は段階的に縮小され、2035年(令和17年)10月には完全に撤廃される予定です。これにより、企業の規模に関係なく、週20時間以上働く短時間労働者が社会保険に加入できるようになります。
いわゆる「年収106万円の壁」として知られていた、月額8.8万円以上という賃金要件も撤廃されます。撤廃の時期は、改正法の公布から3年以内に政令で定められる予定ですが、全国の最低賃金が1,016円以上となることが判断の基準となります。
最低賃金が1,016円以上の地域で週20時間以上働くと、年収換算で約106万円となるため、この基準が撤廃の目安とされています。
現在は、常時5人以上の従業員を雇用している法定17業種※(弁護士・税理士・社会保険労務士など)の個人事業所が社会保険の適用対象です。
今回の改正では、業種の制限が撤廃され、常時5人以上の従業員を雇用するすべての個人事業所が対象となります。ただし、2029年(令和11年)10月の施行時点で既に存在している事業所については、当面の間、適用対象外となります。
※法定17業種 ① 物の製造等、修理又は解体の事業、② 土木、建設等の事業、③ 鉱物の採掘又は採取の事業 ④ 電気の供給等の事業、⑤ 貨物又は旅客の運送の事業、⑥ 貨物積みおろしの事業 ⑦ 焼却、清掃又はと殺の事業、⑧ 物の販売又は配給の事業、⑨ 金融又は保険の事業 ⑩ 物の保管又は賃貸の事業、⑪ 媒介周旋の事業、⑫ 集金、案内又は広告の事業 ⑬ 教育、研究又は調査の事業、⑭ 疾病の治療、助産その他医療の事業 ⑮ 通信又は報道の事業、⑯ 社会福祉法に定める社会福祉等の事業、⑰ 弁護士、公認会計士などの士業 |
社会保険の適用拡大に伴い、新たに加入対象となる短時間労働者への支援策も講じられます。
対象となるのは、従業員数50人以下の企業などで働き、企業規模要件の見直しにより新たに社会保険に加入することになった、標準報酬月額が12.6万円以下の短時間労働者です。
この支援策では、3年間にわたり、保険料の負担を軽減する特例的・時限的な措置が実施されます。また、正社員化や労働時間の延長、賃金アップに取り組む企業には「キャリアアップ助成金」の活用も可能です。
今回の改正は、働き方の多様化に対応し、より多くの人が安心して働ける環境を整えるための重要な一歩です。企業の人事・労務担当者は、今後の施行スケジュールを踏まえ、早めの対応準備が求められます。
当事務所では、助成金の申請を積極的にサポートしております。
社会保険の適用拡大に伴う各種支援策の活用についても、わかりやすくご案内いたします。
どうぞお気軽にご相談ください。
厚生労働省ホームページ【社会保険の加入対象の拡大について】