• TEL: 0297-37-4960 受付時間:9:00~18:00 休業日:土曜・日曜・祝日
  • 【茨城県 守谷市の社会保険労務士】バックオフィスをデザインします!

「せっかく時給を上げたのに、パートさんから『これ以上シフトに入れません』と言われてしまった……」

最近、このようなお悩みを抱える経営者様や人事ご担当者様も多いのではないでしょうか。

実は今、日本全国の職場で同じような現象が起きています。民間研究機関の推計によると、「年収の壁」を意識して働く時間を抑えているパート・アルバイトなどの短時間労働者は、400万人を超えるとされています。

最低賃金の引き上げによって時給が上がる一方、勤務時間を減らすスタッフが増えれば、企業の人手不足はなかなか解消されません。

今回は、この「働き控え」の現状と、2026年の制度改正を踏まえた企業の対応策について、わかりやすく解説します。

◆ なぜ今も「働き控え」が続いているのでしょうか?

伊藤忠総研の推計によると、2026年4~6月時点で、年収の壁を意識して働く時間を抑えている短時間労働者は約408万人にのぼるとされています。

2022年と比べると減少しているものの、依然として多くの方が収入を調整しながら働いている状況です。

その背景の一つに、最低賃金の引き上げなどによる「時給の上昇」があります。

例えば、時給1,100円で月90時間働いていた方の場合、月収は99,000円です。時給が1,300円になると、同じ勤務時間でも月収は117,000円になります。

一定の年収以内に収めたいと考えている方にとっては、時給が上がった分、勤務時間を減らすという選択につながることがあります。

ただし、すべての方が勤務時間を減らす必要があるわけではありません。税金や社会保険の制度、勤務先の条件などによって判断が異なるため、正しい制度の理解が重要になります。

◆ 働く人は増えているのに、全体の「労働力」は減っている?

この働き控えは、企業の人手不足を考えるうえでも見逃せない問題です。

厚生労働省の統計を基にした分析では、次のような傾向が示されています。

  • パートなどの短時間労働者の「人数」は増加:2025年は約1,614万人で、2019年と比べて約5%増加
  • 1人あたりの「働く時間」は減少:2025年の月間平均労働時間は79.1時間で、2019年から約7%減少

つまり、短時間労働者の人数は増えているものの、1人あたりの労働時間は短くなっているのです。

人数と労働時間を掛け合わせた労働供給量は、2019年と比べて約2%減少しており、これは約35万人分の労働力に相当するとの試算もあります。

もちろん、労働時間が減っている理由は年収の壁だけではありません。育児や介護、働き方に対する希望の変化など、さまざまな要因が考えられます。

しかし、企業にとっては「求人を出して採用しているのに、必要な勤務時間を確保できない」という状況につながる可能性があります。

人手不足への対応を考える際には、採用人数だけでなく、スタッフ一人ひとりがどのくらい働けるのかにも目を向ける必要があるのです。

◆ 「年収の壁」はどう変わった?2026年の制度改正を確認

ここで押さえておきたいのが、「年収の壁」に関する制度改正です。

これまでは「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」という言葉がよく使われてきました。

しかし、近年は税制改正や社会保険の適用拡大が進んでおり、従来の金額だけで判断することはできなくなっています。

まず、税金と社会保険の壁は別の制度であることを理解しましょう。

税金については、2025年・2026年の税制改正によって所得税の基礎控除や給与所得控除などが見直されています。2026年分については、給与収入のみでほかに所得がない場合、原則として年収178万円以下であれば所得税がかからない仕組みとなっています。

ただし、住民税の課税基準や配偶者控除などの適用条件は別に定められているため、所得税がかからないことと、税金や扶養に関するすべての負担がなくなることは同じではありません。

一方、社会保険では、いわゆる「106万円の壁」に関係する月額8.8万円以上の賃金要件が2026年10月に撤廃され、対象企業では週20時間以上の勤務などが加入判断の重要なポイントとなっています。

また、社会保険上の扶養に関係する「130万円の壁」も引き続き注意が必要です。

年収の金額だけでなく、勤務時間や社会保険の加入条件も含めた確認が重要です。

◆ 企業が今できる「年収の壁」対策

では、企業はどのように対応すればよいのでしょうか。

制度の変更を待つだけでなく、今から取り組める3つの対策をご紹介します。

1.スタッフの「本当の希望」をヒアリングする

まずは、パートスタッフが何を理由に勤務時間を調整しているのか確認しましょう。

税金や社会保険の負担を気にしているのか、配偶者の勤務先の家族手当を気にしているのかによっても、対応方法は変わります。

大切なのは、スタッフが何を理由に勤務時間を調整しているのかを正しく把握することです。

制度の仕組みを丁寧に説明することで、これまで勤務時間を抑えていた方が、安心して働く時間を増やせる可能性もあります。

2.国の支援制度(助成金など)を上手に活用する

社会保険への加入による負担増加が気になる場合は、国の支援制度を活用する方法もあります。

その一つが、キャリアアップ助成金の「短時間労働者労働時間延長支援コース」です。

この助成金は、短時間労働者の労働時間を延長するなどして、新たに社会保険に加入させるとともに、収入を増加させる取組を行った事業主を支援する制度です。

要件を満たして活用できれば、企業の負担を軽減しながら、スタッフがより長く働ける環境づくりを進めることができます。

ただし、助成金には労働時間や賃金の増加などの要件があり、事前の計画提出など必要な手続きもあります。

「社会保険に加入させれば必ず助成金がもらえる」というものではありませんので、取組を始める前に対象要件を確認することが重要です。

また、一時的な収入増加によって年収130万円を超える場合には、一定の条件のもと、事業主の証明によって社会保険上の扶養を継続できる仕組みもあります。

こうした制度を正しく理解し、自社の状況に合わせて活用を検討してみましょう。

3.業務の棚卸しと効率化を進める

限られた勤務時間でも業務が回るよう、作業のマニュアル化や業務分担の見直しを進めましょう。

勤怠管理やシフト作成にクラウドシステムを導入することも効果的です。

人手不足の解消には、新たな人材を採用するだけでなく、今いるスタッフが働きやすく、能力を発揮しやすい環境を整えることも重要なのです。

◆ おわりに

「年収の壁」による働き控えは、企業にとっても、働くスタッフにとっても悩ましい問題です。

しかし、制度改正が進む今だからこそ、働き方や社内の労務管理を見直す良い機会ともいえます。

大切なのは、単に勤務時間を増やしてもらうことではなく、一人ひとりの希望を尊重しながら、企業とスタッフの双方にとって無理のない働き方を考えることです。

「うちの会社では、どのスタッフが社会保険の加入対象になるのだろう?」

「助成金を活用して、勤務時間を増やせる仕組みを作れないだろうか?」

「年収の壁について、スタッフにどう説明すればよいのだろう?」

このようなお悩みがある場合は、まず自社の勤務状況や労務管理体制を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。

当事務所では、社会保険の適用に関するご相談をはじめ、労働時間管理の見直し、助成金の活用、勤怠管理システムの導入支援など、企業の状況に合わせた労務管理をサポートしています。

制度への対応だけで終わらせず、スタッフが安心して働き続けられる職場づくりを、一緒に考えていきましょう。

労務管理や助成金についてお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

※社会保険の加入要件や助成金の支給要件は、企業規模や労働条件などによって異なります。

厚生労働省【『年収の壁』への対応】

厚生労働省【キャリアアップ助成金(令和8年度)】


トップへ戻る