今年度も最低賃金の引き上げが発表され、「うちの会社の時給は大丈夫だろうか」「人件費の負担が増える中でどうやりくりすればいいのか」と不安を感じている経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
今回の改定では、全国の加重平均(全体のバランスを考慮した平均値)が過去2番目の引き上げ幅となる1,177円となりました。10月1日以降、都道府県ごとに順次スタートします。
今回は、2026年度の最低賃金改定の概要と、経営の負担を和らげるために国が用意している主な支援策について分かりやすく解説します。
今回の改定により、全国の都道府県で54円〜65円の引き上げが行われました。主なポイントは以下の通りです。
パートやアルバイトだけでなく、日給制や月給制で働く従業員についても、時給換算した金額がこの最低賃金額を下回っていないか確認が必要です。
最低賃金の引き上げに伴い、中小企業や小規模事業者の負担を軽減するため、厚生労働省や経済産業省からさまざまな支援策が出されています。上手に活用することで、設備投資や業務改善の費用負担を抑えることが可能です。

1. 業務改善助成金
事業場内で最も低い時給を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上につながる設備投資(新しい機器の導入やPOSレジの設置など)を行った場合に、その費用の一部が手当てされる制度です。
2. キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
有期雇用労働者(パートや契約社員などの非正規雇用のスタッフ)の基本給を3%以上引き上げるよう就業規則などを改定した場合に受け取れる手当てです。すべての中小企業が対象になり得ます。
3. 賃上げ促進税制
青色申告(一定のルールに従って帳簿をつける確定申告の制度)を行っている企業が、前年度よりも従業員への給与支給額を増やすなどの要件を満たすと、その増加額の一部を法人税(会社の利益に対してかかる税金)から差し引くことができる仕組みです。
4. IT導入補助金(デジタル化・AI導入等の支援)
業務の効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション:IT技術を使って業務の進め方やサービスを良くすること)を目指し、AIを含むITツールやソフトウェアを導入する際にかかる費用の一部を支援してくれる制度です。
※助成金や補助金は、同じ設備投資に対して重複して受けることはできませんが、制度の条件を組み合わせることで自社に合った効果的な活用が可能です。
最低賃金の引き上げは「単に時給を上げれば終わり」ではありません。後からのトラブルを防ぎ、無理のない賃上げを行うために、以下の3つのステップで順を追って対応を進めることをおすすめします。
ステップ1:支給している給与の「正しい時給換算」を行う
月給制や日給制の場合、手当の種類によっては最低賃金の計算対象から除外しなければならないもの(通勤手当、家族手当、残業代など)があります。「基本給+対象となる手当」を労働時間で割り、地域の最低賃金額をしっかり超えているか再確認しましょう。
ステップ2:支援制度の「事前手続き」を確認する
助成金や補助金の多くは、「賃金を引き上げる前」や「設備を購入する前」に申請や計画書の提出が必要です。時給を上げてしまってからでは申請できなくなるケースが多いため、スケジュールには余裕を持ちましょう。
ステップ3:社内全体の「給与バランス」を整える
新人の時給だけを引き上げると、これまで長く働いてくれた先輩社員との給与差が縮まり、不満につながることがあります。「全体の給与体系をどう見直すか」「それに見合う生産性をどう上げるか」を中長期的な視点で考えるきっかけにしましょう。
相次ぐ物価高や人件費の上昇など、経営を取り巻く環境の変化に対応していくのは本当に大変なことです。しかし、国の支援策や助成金を上手に組み合わせて活用すれば、無理をせずに環境を整えていくことができます。
最低賃金の改定は、見方を変えれば「自社の働き方や業務効率を見直し、より魅力的な職場をつくるチャンス」でもあります。まずは自社の給与状況のチェックなど、できることから一歩ずつ進めていきましょう。
中小企業庁【賃上げ・最低賃金対応支援特設サイト】
厚生労働省【最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業】