「忙しい時期になると、いつも同じ人に仕事が集中してしまう」「勤怠システムは導入しているけれど、実際の残業時間を把握できているか気になる」。日々の業務の中で、こうした悩みを感じることはないでしょうか。
厚生労働省は、2026年11月1日から30日まで「過重労働解消キャンペーン」を実施しています。長時間労働や残業代の未払いを防ぎ、安心して働ける職場づくりを進めるための取組です。
この機会に、日頃の労働時間の管理を振り返ってみましょう。確認したいのは、残業時間だけでなく、働いた時間の記録や給与への反映、従業員の健康への配慮です。
期間中は、長時間労働が行われていると考えられる職場などに対し、労働基準監督署(働く時間や賃金などのルールが守られているかを確認する行政機関)が重点的に調査・指導を行います。
主な確認事項は、次の4点です。
今回のキャンペーンによって、新しい義務が11月から始まるわけではありません。普段から必要な取組が、実際の職場で行われているかを見直す機会と捉えるとよいでしょう。

厚生労働省が2026年9月15日に公表した調査結果によると、2025年度に調査した29,150の事業場(工場や店舗、事務所などの職場)のうち、38.5%で法律に違反する残業が、6.5%で残業代の未払いが確認されました。
この調査は、長時間労働が疑われる職場などを対象にしたもので、日本の会社全体の割合を示すものではありません。
それでも、残業時間の確認と給与への反映を、日々の業務の中で確実に行うことの大切さがうかがえます。自社の働き方を知るためにも、記録と実態を照らし合わせることから始めてみましょう。
① 残業の取り決めと、実際の働き方が合っているか
原則として、法律で定められた労働時間を超えて働いてもらう場合や、法律上の休日に働いてもらう場合には、36協定(会社と従業員側が、法律上の労働時間を超える勤務や休日の勤務について範囲などを定める協定)が必要です。
協定は、従業員の過半数が加入する労働組合、または、その組合がない場合は従業員の過半数を代表する人と結びます。そのような勤務をさせる前に、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
届出後も、実際の働き方が協定の内容や法律上の上限に収まっているか、毎月確認しましょう。
② 勤怠の記録が、実際に働いた時間を表しているか
始業・終業時刻は、会社側が直接確認するか、タイムカードやパソコンの使用記録などの客観的な記録を基に確認することが基本です。
本人が申告した時間と客観的な記録に大きな差がある場合は、事情を調べ、必要な修正を行います。パソコンの使用時間などを手がかりに、実際に仕事をしていた時間を確認することが大切です。
「残業を減らすよう伝えた結果、申告だけが減っていないか」という視点でも、運用を振り返ってみましょう。
③ 働いた時間が、給与計算に反映されているか
勤怠の記録を確認したら、残業代が適切に計算されているかも点検しましょう。
例えば、勤怠の記録を修正した際に、その変更が給与計算の担当者へ伝わらなければ、支払額に反映されないおそれがあります。誰が修正内容を確認し、給与計算へ反映するのか、担当者間の連絡の流れを整えておくと安心です。
④ 長時間働く人の健康を守る対応ができているか
一般の従業員については、休憩を除いて週40時間を超えて働いた時間を基準に算定し、その時間が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められ、本人から申出があった場合、会社は原則として速やかに医師による面接指導(働いた時間や体調を確認し、健康を守るための助言を行うこと)を実施する必要があります。
また、算定した時間が月80時間を超えた人には、本人の申出を待たず、その時間数を速やかに通知する必要があります。対象者を把握し、必要な対応につなげられるよう、担当者や手順を確認しておきましょう。
なお、研究開発の仕事に従事する人などには、別の要件が設けられています。
実務では、勤怠の記録、残業の取り決め、給与計算、健康への配慮を、一続きの流れとして確認することが大切です。
最初の一歩として、直近1か月の記録を見て、残業が多い人や部署がないか、記録に気になる差がないかを確認してみてください。気になる点があれば、本人や上司に状況を聞き、仕事の分担や進め方を見直すきっかけにしましょう。
直近1か月の確認を入口に、必要に応じて過去の記録も振り返り、残業の状況を継続して把握していくことが重要です。あわせて、「誰が確認し、気になる状況があったときに誰へ伝えるか」を決めておくと、対応の漏れを防ぎやすくなります。
忙しい職場ほど、一度にすべてを変えるのは難しいものです。今の働き方を知り、できるところから一つずつ整えていく。その小さな積み重ねが、従業員が安心して働き続けられる職場づくりにつながります。
厚生労働省【過重労働解消キャンペーン】