
ニュースで「人材派遣大手5社に立ち入り検査が入った」と報じられました。対象となったのは、パーソルテンプスタッフ、スタッフサービス、リクルートスタッフィング、マンパワーグループ、アデコの5社です。これは派遣業界では初めての大規模なカルテル調査となります。「カルテル」や「独占禁止法」といった難しい言葉が並んでいますが、このニュースは「働く人」と「企業」の両方に大きな不利益をもたらす可能性のある重大な問題です。
「何が問題なのか」をわかりやすく解説します。
派遣会社の大手5社が、裏で口裏を合わせて「派遣先企業に請求する料金を、みんなで一緒に値上げしよう」と相談していた疑いがある、という内容です。
1. 派遣スタッフの「お給料」に還元されていなかった
これが働く人にとって一番の問題です。 派遣料金が値上げされたのなら、本来はそこで働く派遣スタッフのお給料(時給)も上がるべきです。しかし実際は、値上げで増えたお金の多くが派遣会社の「手数料(儲け)」としてポケットに入ってしまい、スタッフのお給料アップにはあまり使われていなかったとみられています。「働く人の待遇を良くするため」という名目で値上げに応じた企業や、一生懸命働くスタッフの信頼を裏切る行為と言えます。
2. 派遣先企業が「不当に高いお金」を払わされていた
派遣社員を受け入れている企業にとっての問題です。 通常なら、「A社が高いなら、少し安いB社にお願いしよう」と比較して選ぶことができます。しかし、大手5社が裏で手を結んでいっせいに値上げをしてしまうと、企業は逃げ道がなくなり、相場よりも高い料金を無理やり払わされることになってしまいます。これは企業経営を圧迫する不公平なルール違反です。
3. 「公正な競争」という社会のルールを破った(カルテル)
複数の会社がこっそり相談して価格を決めることを「カルテル」と呼びます。これは法律で厳しく禁止されています。なぜなら、会社同士の健全な競争がなくなると、サービスが悪くなったり、価格が不当に釣り上がったりして、最終的にサービスを利用する人たち(派遣スタッフや企業)が損をするからです。
人材派遣は、人手が欲しい企業と、自分のライフスタイルに合わせて働きたい人をつなぐ素晴らしい仕組みです。だからこそ、派遣会社には公平でクリーンな運営が求められます。人材確保が難しい時代だからこそ、企業は「適正な賃金」と「適正な価格」で人材を活用できる環境が重要です。
今回の事案は単なる独占禁止法の問題ではなく、
「上がった人件費が本当に働く人へ還元されているのか」
という点を私たち社労士も注視すべき事案といえるでしょう。調査の結果を見守りながら、自社の人材活用や外部人材の利用コストについても改めて確認しておきたいところです。
※本件は公正取引委員会による調査段階であり、現時点で違法行為が確定したものではありません。